草野心平,詩集より

詩集シリーズ第1弾-草野心平

原作 草野心平 第一弾
作曲 白石准(2013年に作曲/2013年初演)
編成 ピアノ1名 チェロ1名 語り2名(基本)
内容 2012年の11月に、福島県、いわき市にある、草野心平文学館にて演奏する事になり、その折、演目は“セロ弾きのゴーシュ”ではありましたが、せっかくだからと、草野作品を二つと、当時特集されていた坂本遼の作品、合わせて三つを構成しました。
草野作品の内、「葬送」はその内容通り、ショパンのソナタの二番から有名な葬送行進曲を、当てはめ演奏しました。

そして、白石准がオリジナルとして最初に書いたのが、“河童と蛙”です。


白石准としては、今まで宮沢賢治のオノマトペの面白さには長年親しんできましたが、それを上回っていると言っても過言では無いこの草野心平の言葉により音の躍動には新たな発見がありました。

それゆえ、音楽のスタイルは、殆どが、ボサノバ調になっていて軽快に跳ね飛んでいます。
この初演は、“セロ弾きのゴーシュ”の演奏と同時だったので、語りとピアノに加え、チェロが重要なパートになっています。
ジャズ・ベースの様にピッチカートで言葉の律動を支え、最後の部分だけ、弓で弾くように書かれています。

編成は、故に、語り手CelloPianoになっています。
初演は、語り手一人でしたが、その直後、山猫合奏団の本拠地、プリモ芸術工房のこけら落とし公演においては、語り手二人で複層的な構成にしました。
同じ言葉を二人で斉唱するのではなく、オノマトペを言い続ける一人が居たりします。

このオノマトペを打楽器の刻みのように扱いました。

正式の初演は、草野心平文学館での公演でしたが、その数日前、実は栃木の小学校で演奏しており、その時の子供たちの反応には意外なほどびっくりし、作曲した方としてはこんなに子供が面白がるとは思わなかったという感想を持ちました。


これ以降2015から2016に掛けて数々の新作を作曲しました。


草野心平 第2弾:2015年作一覧

カジカ:編成;二人の語り手,Cello & Piano
カジカ蛙の鳴き声のオノマトペだけの詩、本来は一人で語れるものを、二人で殆ど分割したり言葉を重ねて完全に語り手というより声の楽器とチェロとピアノのアンサンブルの形態にしています。
ゆき:編成;二人の語り手,Cello & Piano
これも「しんしん雪降り積もる」という言葉の繰り返しだけなので、それを二人に振り分け、音楽用語でカノンという日本語で言うと輪唱の形式も取り入れて、チェロは殆ど、フラジオレットという少々ノイズてきな奏法で静けさを現しています。ピアノは雪が落ちていく状況を同じテンポで包むだけ。
おれも眠ろう:編成;二人の語り手,Cello & Piano
これも九割方オノマトペで出来ているが、原作を読んで、思った事がある。

読む、特に黙読という行為は、そこに言葉の意味を探るという意識が気持ちを支配すると思うので、るるり、とか、ずっとririririと綴ってあると、眼で、「ああ、蛙の声だな」と思うだけで、草野心平が綴ったそのリフレインの回数に意味を感じるか、あるいは、それをなぞって最後まで読むかどうか、かなり疑問だと。
実際、自分で読んでも、眼で読むだけで、耳で読んでいるとは白石准は思わなかった。

音の数を正確になぞって読むものではないと思ったので、草野心平の書いた音の数を忠実に音符に置き換えてみました。
音読するのだから、ririririri、や、riririririririと記述されているところを、はっきりと五拍子や七拍子で描いて、意味を伝えると言うよりも楽器として律動的な音楽にしました。

途中まではピアノの描くメロディとハーモニーが支配しますが、途中から、入ってくるチェロは、この作品でもフラジオレットだけで、音響効果てきなサウンドを奏でます。
すべては静けさと眠気を音楽は現しています。
かえるのうたのおけいこ:編成;二人の語り手,Cello & Piano
これは情景を現す言葉が最初の方にあるので、様々な音楽のスタイル(中にはジャズ・ワルツ、ボサノバもある)で、二人の語り手の掛け合いを表現しています。
他の作品にも出て来ますが、草野心平はクライマックスの田んぼに響き渡る蛙の大群の声を、「ぎゃわろ、ぎゃらろ、ぎゃわろろろろり」と綴っていますが、その律動を繰り返して居る間に敢えてスティーブ・ライヒという作曲家が80年代に始めたミニマル・ミュージックの様に朗読の範疇から、少々逸脱して行きます。それは此処には記述しません。聴いてのお楽しみです。


草野心平 第3弾:2016年作一覧

鰻と蛙
春殖
祈りの歌
さやうなら一万年
ひなた雨
蛇祭り行進
桂離宮竹林の夜
ごびらっふの独白


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